Works
香をあじわい 宇宙を聞く
増上寺 光摂殿
June 2022
香を聞き 香木をあじわう 500年の伝統を受け継ぐ志野流香道の次期家元 蜂谷宗苾と諏訪綾子による食体験。
室町時代から20代続き、500年の伝統を受け継ぐ「志野流香道」。
その次期家元である蜂谷宗苾(はちやそうひつ)と、食のアーティスト 諏訪綾子による食体験「香をあじわう」。
ガストロノミーの世界で注目されるシェフ パティシエの加藤峰子と、
日本を代表するミクソロジスト、南雲主于三をゲストコラボレータに迎えて
2022年6月20日に、志野流香道と縁の深い 増上寺 光摂殿 大広間で1日・2回に限り、開催されました。
志野流香道で使用する「沈水香木_じんすいこうぼく」は、
東南アジアの深い森の中で百年以上掛けて育まれた自然の叡智そのもの。
同じく山梨県の深い森林に暮らしながら自然から樹木からのインスピレーションを受け取り
作品を創作する諏訪綾子が表現したのは「香を聞き 香木をあじわう」という食体験。
香道の世界からのインスピレーションを元に、諏訪が紡いだストーリーから、
蜂谷宗苾 若宗匠が、貴重な七種の香木を選定。体験者はそれを順番に聞香(もんこう)。
対応して、七種の香木を使った飲み物、食べ物を交互にあじわう。
参加者は、五感を研ぎ澄ませて香りと味わいから体感する時空を超える食体験となりました。
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【香をあじわう メニュー】
1_波打ち際の流木
特に美しいわけでも珍しいわけでもない、いつもの波打ち際で拾った、枯れ朽ちた流木を、かまどの火に投げ込む。その煙は、たちまち見慣れた日常の景色を変えて、この顔の真ん中にある鼻というものの理由を知る。我にかえって、慌てて火を消し、その「香木」からただよう、目にはみえないなにかを追いかけて、旅に出る。
2_月の土
本当のムーンウォークは、あんなにスムーズにはいかない。浮き足たつし、跳ねるわけでもなく跳ねて、転びきらずに転んでしまう。爆発した星のかけらが、何十億年つもり積もって、反射して光を放つ。はるか遠くの夜を照らし、生きものたちの野性を騒がせている。たちこめる土埃は、ぼんやりとした感覚をさらに煙にまく。だれかが離着陸するたび、風が吹くたび、くしゃみが止まらない。
3_地球外知的生命体
得体の知れない、異界の異質。昨日までのわたしたちは、ひたすら想像し、かなり妄想し、いよいよ憧れた。予測不可能で、予感に満ちていた。どの時空でも、未知をあじわうのは既知の感覚。いつどこからやってきたわけでもなく、ずっと前から隣にいたそうで。「あなたこそ、とある惑星からやってきた生命体だ」とその生命体は囁いた。
4_増上寺 光摂殿
今ここ。見上げればそこは極楽浄土。わたしたちが浮かぶ時空。春も夏も秋も冬も、風も土も水も火も、めぐり巡る。その限りある永遠のなかの一瞬を、わたしたちは共にあじわう。そしてきっとあじわわれる。おたがい名前も知らないわたしたちは、おなじ感覚を共有して、おなじ宇宙を浮遊する。そんな奇跡のような、今ここ。
5_太陽フレア
その嵐は、恐ろしくも美しく、100年に一度の注意報警報。わたしたちになす術はなく、ただただじっとやり過ごす。嵐の前の静けさと、嵐の中の静けさに、わたしたち生きものはわけもなく静かに高揚する。その凄まじいエネルギーの恩恵も損害も、ドラマティックも、儚さも、わたしたち生きものはあじわうことができる。
6_火星移住
この星に移住して、わたしたちは火星人になった。地球にいた頃の名残りはわずかに残された嗅覚だけ。ここに地球を再現したかった地球人は今はもういない。酸素のほとんどないこの火星にあわせて進化した生きものになって、この星をいきいきと生きている。科学や技術の進歩もいいけれど、なにより地球のバックアップだ、と叫ぶ声が今も遠くでこだまする。
7_碧く光る星
暗闇の中で光る星を見つけて、記憶がよみがえる。風が吹く、水が湧き出る、土に根が張り、緑が繁る。水に沈む木々、火に集まる生きものたちは、いつかどこかで会ったことがあるような。わたしのDNAは、ざわめきときめく。花を愛で、月を眺めていた頃。遠く、碧く光る星をあじわい、わたしは宇宙を聞く。
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【蜂谷宗苾 若宗匠が選定した香木】
1_枯木 _こぼく
2_月の下風 _つきのしたかぜ
3_仙風 _せんぷう
4_大内 _おおうち
5_眞芳野 _みよしの
6_紅 _くれなゐ
7_無名 _むめい
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香をあじわい 宇宙を聞く
この世界は 目にはみえないもので満ちている
感覚鬼神 研ぎ澄ませ
時空を超えて 旅にでる
近い未来
ほんのすぐそこで 宇宙を聞く
遠い今日
はるか彼方で 風土をあじわう
わたしたちは どこから来て どこへ行くのでしょうか
わたしたちは なにをあじわい なにをきくのでしょうか
諏訪綾子
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その次期家元である蜂谷宗苾(はちやそうひつ)と、食のアーティスト 諏訪綾子による食体験「香をあじわう」。
ガストロノミーの世界で注目されるシェフ パティシエの加藤峰子と、
日本を代表するミクソロジスト、南雲主于三をゲストコラボレータに迎えて
2022年6月20日に、志野流香道と縁の深い 増上寺 光摂殿 大広間で1日・2回に限り、開催されました。
志野流香道で使用する「沈水香木_じんすいこうぼく」は、
東南アジアの深い森の中で百年以上掛けて育まれた自然の叡智そのもの。
同じく山梨県の深い森林に暮らしながら自然から樹木からのインスピレーションを受け取り
作品を創作する諏訪綾子が表現したのは「香を聞き 香木をあじわう」という食体験。
香道の世界からのインスピレーションを元に、諏訪が紡いだストーリーから、
蜂谷宗苾 若宗匠が、貴重な七種の香木を選定。体験者はそれを順番に聞香(もんこう)。
対応して、七種の香木を使った飲み物、食べ物を交互にあじわう。
参加者は、五感を研ぎ澄ませて香りと味わいから体感する時空を超える食体験となりました。
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【香をあじわう メニュー】
1_波打ち際の流木
特に美しいわけでも珍しいわけでもない、いつもの波打ち際で拾った、枯れ朽ちた流木を、かまどの火に投げ込む。その煙は、たちまち見慣れた日常の景色を変えて、この顔の真ん中にある鼻というものの理由を知る。我にかえって、慌てて火を消し、その「香木」からただよう、目にはみえないなにかを追いかけて、旅に出る。
2_月の土
本当のムーンウォークは、あんなにスムーズにはいかない。浮き足たつし、跳ねるわけでもなく跳ねて、転びきらずに転んでしまう。爆発した星のかけらが、何十億年つもり積もって、反射して光を放つ。はるか遠くの夜を照らし、生きものたちの野性を騒がせている。たちこめる土埃は、ぼんやりとした感覚をさらに煙にまく。だれかが離着陸するたび、風が吹くたび、くしゃみが止まらない。
3_地球外知的生命体
得体の知れない、異界の異質。昨日までのわたしたちは、ひたすら想像し、かなり妄想し、いよいよ憧れた。予測不可能で、予感に満ちていた。どの時空でも、未知をあじわうのは既知の感覚。いつどこからやってきたわけでもなく、ずっと前から隣にいたそうで。「あなたこそ、とある惑星からやってきた生命体だ」とその生命体は囁いた。
4_増上寺 光摂殿
今ここ。見上げればそこは極楽浄土。わたしたちが浮かぶ時空。春も夏も秋も冬も、風も土も水も火も、めぐり巡る。その限りある永遠のなかの一瞬を、わたしたちは共にあじわう。そしてきっとあじわわれる。おたがい名前も知らないわたしたちは、おなじ感覚を共有して、おなじ宇宙を浮遊する。そんな奇跡のような、今ここ。
5_太陽フレア
その嵐は、恐ろしくも美しく、100年に一度の注意報警報。わたしたちになす術はなく、ただただじっとやり過ごす。嵐の前の静けさと、嵐の中の静けさに、わたしたち生きものはわけもなく静かに高揚する。その凄まじいエネルギーの恩恵も損害も、ドラマティックも、儚さも、わたしたち生きものはあじわうことができる。
6_火星移住
この星に移住して、わたしたちは火星人になった。地球にいた頃の名残りはわずかに残された嗅覚だけ。ここに地球を再現したかった地球人は今はもういない。酸素のほとんどないこの火星にあわせて進化した生きものになって、この星をいきいきと生きている。科学や技術の進歩もいいけれど、なにより地球のバックアップだ、と叫ぶ声が今も遠くでこだまする。
7_碧く光る星
暗闇の中で光る星を見つけて、記憶がよみがえる。風が吹く、水が湧き出る、土に根が張り、緑が繁る。水に沈む木々、火に集まる生きものたちは、いつかどこかで会ったことがあるような。わたしのDNAは、ざわめきときめく。花を愛で、月を眺めていた頃。遠く、碧く光る星をあじわい、わたしは宇宙を聞く。
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【蜂谷宗苾 若宗匠が選定した香木】
1_枯木 _こぼく
2_月の下風 _つきのしたかぜ
3_仙風 _せんぷう
4_大内 _おおうち
5_眞芳野 _みよしの
6_紅 _くれなゐ
7_無名 _むめい
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香をあじわい 宇宙を聞く
この世界は 目にはみえないもので満ちている
感覚鬼神 研ぎ澄ませ
時空を超えて 旅にでる
近い未来
ほんのすぐそこで 宇宙を聞く
遠い今日
はるか彼方で 風土をあじわう
わたしたちは どこから来て どこへ行くのでしょうか
わたしたちは なにをあじわい なにをきくのでしょうか
諏訪綾子
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