food creation

Works

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記憶の珍味 諏訪綾子展 資生堂ギャラリー_前期

18 January - 29 February 2020
Venue : Shiseido Gallery
Organizer : Shiseido Company, Limited

Exhibition cooperation :Food creation produced by Shinya Furui
Sponsor : Nihon Firmenich K.K.
Cooperation : Gems International Co., Ltd., K’s Design Lab Inc., SHINTO V-CERAX, Ltd., Sisii Co., Ltd., art and program Inc. (interaction design), LADER PRODUCTION Inc. (sound design), Epo Labo, Little Tree, Yoro no Mori, Muga Miyahara

Photo : Ken Kato, Shinya Furui

誰もが個人的にもっている記憶をテーマに新たな「食」の表現に取り組んだ展覧会。

資生堂ギャラリーの挨拶文より_

諏訪綾子は、本能的な無意識の感覚に訴えることのできる表現媒体として「食」を扱い、体験者に新たな問いや発見をもたらすことを追求する、現在、世界で高い注目を集めるフードアーティストです。
本展で諏訪綾子は、誰もが個人的にもっている記憶をテーマに新たな「食」の表現に取り組みます。諏訪は、記憶を私たちの意識であると同時に無意識でもあり、私という自己そのものと捉えます。展覧会を通じて記憶を美しくかけがえのない珍味として「あじわう」ことで、「わたし」自身をあじわう体験の創出に挑戦します。また、本展で諏訪が表現する「食」の体験は、自然の美しさや儚さを感じ、それを和歌に詠み、香を聞き、茶を点てるという遥か昔から日本人が行ってきた他者との「感覚の共有」であり、同時に日本人の美意識や精神性を育んできた「自然からのインスピレーション」を受け取って自らの感覚を研ぎ澄ませるという体験でもあります。

[会場内での試み]
会場には、諏訪が様々な香りから調合した数種類の「記憶の珍味」を来場者が実際にあじわうことで、自身の記憶を呼び起こす体験の場が設けられます。また、自然の中から生じた有機的なかたちをともなった「記憶」をあじわうための幾つものツールがインスタレーションとして展示。会期中には、不定期に、ギャラリー内で、諏訪自身が自らの記憶をゲストとともにあじわい、その感覚を共有する参加型のパフォーマンス「記憶の珍味をあじわうリチュアル」を実施。諏訪自身がその場でもてなす生の「記憶の珍味」をあじわうことは、ゲストにとってそれぞれの個人的記憶を共有することができるようなリチュアルでドラマティックな体験を生み出します。

[来場者の経験]
現代の文明社会に生きる私たちにとって、自然に寄り添い感じ取られる感覚を他者とともに共有することは、もはや貴重な経験となったのではないでしょうか。本展で、来場者はあじわいを通じ自らの記憶を他者と共有することによって次第に開かれていくコミュニケーションを経験するとともに、「自然からのインスピレーション」を体感することでしょう。そして、それは日本人が受け継いできた繊細な美意識や内面的な精神性という捉えがたい感覚を他者と共有し、「わたしとは何ものなのか」という問いに想いを馳せる機会となるはずです。


*

いつの日か最後の晩餐には「記憶の珍味」をあじわいたい

わたしたちは記憶の中に生きている
記憶がわたしをかたちづくっている

子供の頃の記憶、あの時の記憶
それから、おとといの記憶、今朝の記憶、1分前の記憶
そして、生まれる前の記憶

それは時に、にやけてしまいながら、たぐりよせながら、せつなくなりながら
忘れたいと思いながら、あじわっている

記憶は、意識であり、無意識であり、わたしそのもの

記憶を美しい珍味として、
嗅いだり、舐めたり、咀嚼したり、飲み込んだりしながら
わたし自身をあじわっている

そしてその瞬間さえもあたらしい記憶となって
珍味はますます熟成する

あじわうほどにあじわい深く
噛みしめるほどにうまみを増す

美しい記憶の珍味は、あなたの中にある


諏訪綾子